【ネクロニカシナリオ】黄金の夜明け
参加PL人数:4人
必要時間:2時間程度
合計悪意:72点
参加PL人数が少ない場合、適当に悪意を減らしてください。
〈あらすじ〉
幾多の苦難を乗り越え、遂にドール立ちは大陸の東海岸までたどり着きました。
今なお色鮮やかに思い出せる海岸線を求めて。
あともう少しのところで、声が語りかけます。
「キミたちの冒険も遂に終わりを迎える。さぁ、もう少しだ…」
これまでの旅路で幾度も助言や忠告をくれたディープスロートと名乗る謎の声です。
〈注意〉
このシナリオは、「女の子がイチャイチャするよりも、おっさんたちがロスからニューヨークの東海岸まで滅びた世界を旅するロードムービーの方がよくね?」という発想から生まれたシナリオです。
セッションが始まった時点で、ドールたちは長い旅路を踏破してきた、と言う設定です。
これまでの旅路をPLとNCが協力して、捏造していくシナリオです。まったく存在していなかった出会いや別れ、強大な敵、ドールたちの関係性の変化などなど勝手に設定を生やして楽しみましょう。
ついにキャンペーンシナリオ(大嘘)も終了です。彼女たちが踏破してきた道を思えば必ずや乗り越えられると信じています(大嘘)。
ドールたちは全員共通で記憶のカケラ【海岸】を取得しています。また、それ以外に記憶のカケラを3個を獲得しています。これはロールオアチョイスで決めてください。
また、初期寵愛点を30点与えます。(ここら辺の、さじ加減はお好みで)
それ以外は、通常の作成ルールと同様に作成を行ってください。
〈背景〉
ハーヴェスト = リードは滅び去った世界に絶望します。そんな折、彼が1本の映画を発見します。
主人公たちは、様々な冒険を経て、友情を育み困難を乗り越え、目的地の海岸から昇る朝日に涙する、言ってしまえばよくあるロードムービーでした。
娯楽のない世界において、それは彼をいたく感動させました。自分もあのロードムービーの主人公たちになれるだろうか。
しかし、彼は、自身の肉体が長い旅路と過酷な環境に耐えられるものではないことを知っています。
ならば、他者から奪えば良い。
彼は、物体を別の場所に送るアスポーツという能力を持っています。また、自身を改造することで、捕食したドールの記憶や感情などを鮮明に得ることが出来ます。
これによりニューヨークで制作されたドール(記憶のカケラによりニューヨークを目指すように仕向けてある)をアメリカ各地にアスポーツ(転送)し、ニューヨークまでたどり着いたドールたちから彼女らの冒険譚を強奪し自身のものにします。
彼は名前をディープスロートに変えました。時にドールを助け、時に困難を配置し、彼女たちの物語が自分好みの素晴らしいものになるように肥料を蒔き、剪定し、収穫する。
それが彼にとっての最大の娯楽となったのです。
彼は、観客が自分しかいない劇場で延々と映画を眺めるような、何者にも埋めがたい孤独を抱えています。
自身の命すらあまり頓着しませんが、鑑賞を邪魔するモノは一切の慈悲も無く叩き潰します。
〈アドベンチャーパート〉
●カルマ
アドベンチャーパート開始時に公開されるカルマは1つです。
『東海岸からの日の出を見る』
このカルマは全員共通です。
●廃墟の街
PLの要望が無ければセッションはニューヨークに到着し、一息ついているところから始まります。以下の描写を読み上げてください。
「キミたちは、自身の記憶のカケラ……東海岸からの日の出……だけを頼りにロサンゼルスからニューヨークまでたどり着いた。
日は暮れ、辺りは夜の帳が降りきった頃。月が輝く静かな夜。わずかに残る生前の記憶とは似ても似つかない街並みの中、キミたちは焚き火を囲んでいる。
かつて人の往来が盛んであった幹線道路に人の姿も無く、現在そこを行き来するは異形の怪物のみ。
それもキミたちの手によって駆除された。
頬をなでる風にも潮の香りが混じる。ディープスロートと名乗る謎の声によると、数ブロック先の瓦礫の山を越えれば、海岸は眼と鼻の先だ。
彼の姿は杳としてしれない。しかしながらドールたちに助言や忠告を施し、幾度も危機を救ってきた。実際、彼が残したメモや音声レコーダ、武装が無ければドールたちは、道半ばで朽ち果てていただろう。
旅の終わりは近い。これまでの旅路…出会いや別れ、成長、乗り越えてきた辛苦…を語り合うのも良いだろう。
幸いにして夜はまだ始まったばかりだ。」
〈解説〉
ドールたちはロサンゼルスからニューヨークの東海岸まで旅をしました。
これは、彼女たちは記憶のカケラ【海岸】を全員が所有しており、強迫観念にも似た衝動に突き動かされる形で大陸を横断したからです。PLたちに質問されたらそう答えてください。
これはディープスロートが彼女たちを作成する際に刷り込んだものです。世界は荒廃し、変わり果てた中、自我が壊れないようにわずかに残る記憶のカケラにすがりつくように仕向けられたのです。
まぁ、別にアメリカで無くても良いです。スタート地点とゴールは問題ではなく、重要なのは彼女たちが“長い冒険の末、ゴール目前までたどり着いた”ことです。
セッション開始時点で狂気点がマックスに近いので、対話判定で彼女たちが紡いだ旅路を思う存分演出してもらいましょう。
●鳴り響く電話
「月はにわかに立ちこめてきた鈍色の雲に隠れてしまった。静寂を破るように突然電話のベルが鳴り響く。
見ると横倒しになった電話ボックスが音源のようだ。
(誰かが取る)受話器越しに聞き覚えのある声がした。
「まずは、おめでとうと言っておこう。」それはディープスロートのものだ。
「キミたちの冒険も遂に終わりを迎える。さぁ、もう少しだ…」
「私は、街と海岸を隔てる瓦礫の山の前にいる。キミたちが来てくれるのを楽しみにしている」そう言うと電話は切れた。
なぜドールたちを助けてきたのか、その正体は誰なのか、旅の始まりから奇妙に見え隠れしていた謎の協力者と邂逅できるようだ。
もうじき夜は明ける。急がねばなるまい」
〈解説〉
十分対話したドールたちにディープスロート(旅の協力者)から電話が掛かってきます。
電話ボックスじゃ無くてもいいです。ドールたちと連絡が取れるのなら手段を問いません。
ディープスロートが持つアスポーツ能力でメモがどこからともなく出現する等でも構いません。
対話を打ち切り、ディープスロートとの邂逅を促します。
●その正体は…
瓦礫の山の前、その男は立っていた。
薄暗闇の中、白衣姿の穏やかな表情を浮かべた紳士に見える。
「初めまして、と言うべきかな。私の名はハーヴェスト = リード。またの名をディープスロート」
「キミたちを何故助けたのか。それはキミたちが私の作り出した娘たちだからだ」
「種を蒔き、水と肥料を与え、そして育った作物を収穫する。キミたちは私の自慢の娘たちだ」
そのとき、薄く立ちこめていた雲の隙間から月光が柔らかく辺りを照らした。
ハーヴェストの背後、瓦礫の山に見えたそれは、あちこちから腕や足が突き出している。
よくよく見るとそれは、何百、何千と折り重なったアンデッドやドールたちの死骸で編まれた悍ましき集積地だ。
(ドールが瓦礫の山を指摘する)「あぁ、これはまさしく瓦礫の山、ただの残骸だ。かつて収穫したキミたちじゃないキミたちの絞りかすだ。しかしながら、彼女たちの描いた物語はどれも胸を打つ素晴らしいモノばかりだった」
「さぁ、キミたちの今までの冒険を聞かせておくれ」
彼がドールたちの創造主であり、過去キミたちと同じようなドールを作り出しては“収穫”していたことを姉妹全員が理解できます。
全員に狂気判定(修正±0)
(肯定しても否定しても)「皆まで言わなくて良い。私には摂取した粘菌の自我から、その記憶と感情を取得できる。私とキミたちの間に言葉は必要じゃない。キミたちを摂取すれば分かることだ。私たちはわかり合える」
「キミたちの良いところはたくさんあるのだろう。それはキミたちを破壊した後に探すとしよう」
突如、瓦礫の山が内側から弾ける。
そこかしこに散った残骸たちは、それ自体が意志を持ったかのように蠢くと手近にあるモノ……コンクリート片、武装、破壊された腕や足、触手……と融合し、様々な姿の異形と化す。
ものの数十秒で辺りには大小無数のアンデッドが群れをなす地獄の様相を呈していた。
また、それら以外にも見覚えのあるサヴァントたちも現れる。
冒涜的に機械化された飛行サヴァント。ゴシックドレスに身を包んだ、青ざめた顔に冷徹な微笑を浮かべるサヴァント。虫、鳥、魚、人が無秩序に繋ぎ合わされた悍ましき異形サヴァント。4体の中で唯一特徴に乏しい兵士型サヴァント。
「キミたちも過去何度か戦ったことがあるが、一応紹介しよう。彼女らはヴァルキュリア、キラークイーン、キュマイラ、ネクサスだ」
「キミたちがシカゴで破壊してくれたヴァルキュリアとキュマイラは私が回収して改造した」
「以前の彼女たちとは同じだと思わない方が良い」
(ドールたちと適当な因縁をでっちあげる)
正視に堪えぬ状況の中でさえ、ディープスロートは穏やかに微笑む。
「キミたちも彼女たちと仲良くしてやって欲しい。なぁに、姉妹同士、すぐに打ち解けるだろう」
戦闘開始
〈解説〉
ドールたちが道半ばで倒れる物語も好きですが、ここまでたどり着いた彼女たちに敬意を表して質問には丁寧に答えてくれます。
その場合、PLたちに投げ返しやすいような答えを心がけてください。
PLたちが、どんな質問をしてくるのか未知数なのでアドリブで頑張ってください。NC、PL含め誰もドールたちとディープスロートの間に過去どんなやり取りがあったのか知らないからです。
何故助けたのか→キミたちは自分が生み出したもので、稚魚を河に放すようなもので、今収穫の時が来た
生前のこと→ここで生き、平凡極まりない人生を送り、やがて死ぬ。そんなつまらない筋書きは私には到底我慢できなかった。だから私の手で価値ある物語に書き換えた。いくつもの野を越え、私が配置した困難を突破し知恵と友情で絶望的な状況すら生きのこってみせた。今、キミたちの物語はクライマックスを迎えた。見応えのあるものになったと自負している。
何故【海岸】を埋め込んだのか→世界が壊れる前の映画に影響を受けた。主人公たちは様々な冒険を経て、友情を育み困難を乗り越え、目的地の海岸から昇る朝日に涙する、言ってしまえばよくあるロードムービーだ。それに私はいたく感動した。
私は主人公になれる器ではない。では主人公となれるモノを用意すれば良い。私は主人公たちが描く冒険を客席から眺める。それで良い。キミたちの幕引きは近い。劇が終わったあとなのに役者が居座り続けることは許されない。
〈バトルパート〉
●カルマ
バトルパート開示に公開されるカルマは1つです。
『包囲を突破し、海岸にたどり着く』
このカルマは全員共通です。
●勝利条件
『敵の主力(ヴァルキュリア、キラークイーン、キュマイラ、ネクサス)の破壊』
舞台に配置された上記の主力級手駒全ての攻撃マニューバを損傷させてください。
NCは攻撃マニューバを最優先で残して構いません。
●手駒の配置
花園 ゾンビ×10
グール×1
キュマイラ(データは基本ルルブp134“キメラ”)
モンスター
煉獄 モンスター
ゾンビ×10
ネクサス(データは基本ルルブp134“ネメシス”)
キラークイーン(データは基本ルルブp135“ゾンビクイーン”)
地獄 ゾンビ×5
奈落 ゾンビ×10
ヴァルキュリア(データは基本ルルブp135“バルキリ-”)
●NCの戦術
ネメシス、ゾンビクイーンで煉獄、花園を殴る。奈落からはバルキリ-が【レーザービーム】でドールたちを攻め立てましょう。
バルキリ-に近づかれないようにソンビたちは【むらがる】を積極的に使って妨害しましょう。
花園から奈落まで攻撃可能なドールがいる場合、グールとモンスター、キメラに最優先で花園を攻撃させると良いでしょう。
楽園に引きこもっているドールがいる場合も、モンスターを突っ込ませるなりして、ドール全体の損傷を均等にさせます。
〈寵愛〉を30点分配った状態でPL4人と戦うことを想定しているので、敵が弱いかもしれませんが、そこはキャラシを見てソンビやモンスターをこっそり増減させるなり、手駒にパーツを増やしたりで対処してください。
(筆者はシナリオ書いてる時点でネクロニカは1回もプレイしてないので戦闘バランスがよく分かっていません)
サヴァント4体がどのような性格なのかは、PLたちとも協力して適当に決めてください。単純に、自我は無いとしても構いません。
(戦闘中のセリフ例)
「私は、海に行かせたくない。これは親切心だ」
「様々な冒険を胸に数多くの姉妹たちと眠る。それが慈悲だとも思っている」
「キミたちの記憶のカケラ、美しい日の出。それが今や変わり果ててしまったものだとしても、キミたちは行くのかい」
(戦闘終了後のセリフ例)
「キミたちの歩みを鑑賞できなかったのは残念だ。私の想像をも超えてキミたちは成長した」
「一人のクリエイターとしてこれほど嬉しいことは無い。キミたちは最高の作品だ」
「思えば、キミたちに対しては道中助言が過ぎたな。スクリーンの向こう側に応援を送るようなものか」苦笑する。
「自分が生み出した登場人物に愛着がわくように、いつの間にか感情移入していたのかもしれない」
「物語において“父殺し”は普遍的なテーマだ。さぁ、我が
(ドールが殺そうとする)「私はこの世界で生きることに疲れた」
(ドールが見逃す)「私はキミたちの物語を“収穫”するために、また現れるかもしれないというのに、見逃すのかい」
ハーヴェストは宣言だけで倒せます。壊れ果てた世界に絶望しており、生きる気力も無いため、抵抗しません。
〈エンドパート〉
●修復
戦闘に勝利したなら、ドールたちは以下のパーツを手に入れることになります。
基本パーツ 強化パーツ
18 9
●旅の終わりに
キミたちの記憶とはまったく異なる砂浜が広がっている。
海岸線は無数の漂流物に覆い尽くされていた。打ち寄せられた無数の死骸や使途不明の物品の数々が美しい景観を破壊している。
また、海はコールタールの塊のように黒く濁っており、その汚染の深刻さを嫌が応にもキミたちに突きつける。もはや生物が住むことは叶わぬだろう。
白い砂浜、青い海。そういった旧世界の思い出は、ここにはない。
……だが、変わらないものもある。
海岸線の向こうから徐々に陽が昇る。次第に明るさを増す水平線に眼を細めた。
脳裏に焼き付いた夜明け、それをキミたちは眺めている。
ドールたちは生前の記憶をおぼろげに思い出します。
全員が任意の「記憶のカケラ」を取得します。
どんな記憶を思い出したのか、ドール間で話す時間を持ちます。
それが終わったら以下の描写を読み上げます。
様々な出会いがあった。それ以上の別れがあった。
何度、膝を折ることがあっただろうか。そのたびに仲間は叱咤し、励ましてくれた。
幾たびの苦難を超えて今、旅の終わりにたどり着いたのだ。
世界は変わってしまった。完膚なきまでに壊れたと言っても過言ではない。
しかしながら、きっと変わらないものもある。
その日の出はとても美しい景色だった。
描写を読み上げた後は、ドールたちの対話判定に任せて、PLたちが納得のいくようなエンディングを演出できたら、
以下の描写を読み上げてセッションは終了。
これは、世界が終わった後の永い後日談。
絶望せず、狂気に溺れず。
壊されず、人形に堕ちず。
ついに、キミたちは心ある“人”として、永い後日談に自らのストーリーを打ち立てた。
それはネクロマンサーが描いた筋書きさえも乗り越えたキミたちだけのオリジナルだ。
幕が下りた後でも少女たちの冒険は続く。
しかし、それはまた別の物語。今宵はお話はここまで。
どうか彼女たちの後日談に幸あらんことを…
〈解説〉
ここで適当なBGMを流して良い話風にまとめてください。
●寵愛を渡す
基本となる寵愛点は18点です。
さらに、以下の3つのカルマについて、チェックしてください。
『東海岸からの日の出を見る』
『包囲を突破し、海岸にたどり着く』
『記憶のカケラを獲得する』
これらを達成したドールは、カルマ1つごとに2点の寵愛点をそれぞれ獲得します。
この後もシナリオを続けても構いません。その場合は、適当なシナリオを書いてください。
〈あとがき〉
ネクロニカを1回もプレイしてないので、正直戦闘のさじ加減がこれでいいのか、まったく分かりません。とりあえず頭に浮かんだことをシナリオみたいなものにまとめてみました。シナリオ自体は、ガバガバで穴だらけなのでNCとPLが協力して埋めてください。エンディングは、昇る朝日を見ながら適当に感動的なBGM流しとけば良いみたいな映画はわりと好きです。
あと、シナリオ書き始めた時の箇条書きメモが残っていたのでどうぞ。読まなくても構いません。
・ネクロニカ
・いきなり最終回セッション
・ロサンゼルスからニューヨークまでの旅の思い出をPLたちにねつ造してもらう
・荒廃した世界での旅の思い出などを焚火にあたりながら話す
・彼女たちの脳内に深く刻まれた記憶「東海岸での夜明け」だけを頼りにニューヨークまで
・もう少しというところでドールマスターが登場「キミたちの旅は素晴らしかった。だが、日の目は見ることはない…。ゴール直前で朽ちる、そんな絶望的な表情を私に見せておくれ」
・ニューヨークの海岸を囲むようにそびえ立つ隔壁の前。一人の男が立っている。「私の名は○○。またの名をディープスロート」「キミたちの冒険を聞かせておくれ」「いや、皆まで言わなくても分かる」
「キミたちの脳を直接摂取すればいいのだから」「さぁ、はじめよう」(男の体がゴキゴキと骨のきしむ音と共に変形する)
・(戦闘終了時)「私が敗れるか…。成長したな娘たち」「キミたちの冒険は全て私の気まぐれが発端だったが、海を見せないのは私の慈悲だ」「埋め込んだ記憶、そんな美しいものはこの世界にはない」
「それでも行くのか」「扉を抜けキミたちが求めたものを見てくると良い」