脳に重大な欠陥を負ったヨタモノ

TRPGとかTCGとか仮面ライダーとかソシャゲとか…

【DX3rdシナリオ】Burning Promise

プレイした後、ログを見返して「えっ、こういう意味もあったのか!」と思ってもらえるようなシナリオを書こうとしました。
難しいですね。無茶苦茶な言動にも一定の説得力を持たせられるので、やはりEロイスの開発は偉大ですね。


■ストーリー1

東京近郊N市では人が突如燃え上がりジャーム化する事件が発生していた。
事件の陰には2人のFHエージェントが暗躍している。
一人は凶暴な男--“ハボリム”火野悟、もう一人は小柄な少女--“アイム”六郷美月。
ハボリムは秘密裏に街の人々を殺害し、アイムが蘇生させる。
蘇った人間はレネゲイドウィルスに感染している。
それらの人間を一挙にオーヴァードに昇華させるため、ハボリムは花火大会の弾に起爆用のウィルスを仕込んでいた。
花火が打ち上れば多くの人々はジャーム化し、未曽有の災害に発展するだろう。
PCたちがハボリムの計画を突き止め、ハボリムとアイムを倒せばシナリオ終了となる。

 

■ストーリー2

FHエージェント“アイム”六郷美月は、かつて自身の父親から受けた虐待によりオーヴァードとして覚醒した。
覚醒時の暴走で自身の両親を手にかけた美月は、罪悪感から逃れるため<赤色の従者>を使用し、“ハボリム”という人間に酷似した疑似生命体を作り出した。
両親を殺し、家を焼いたオーヴァードはハボリムと思い込み、美月は自分のおぞましい記憶と性格を封じ込めた。
その後、ハボリムと共にFHエージェントとして活動し、この夏、かつての故郷に任務として訪れた。

■トレーラー

遠い記憶。かつて一人の女の子がいた。
「これは火の悪魔を召喚する魔法陣」
何でもない、ただの遊びだったはずだ。
しかし、彼女の両親は焼死し--彼女は火炎の向こうに消えた。
「明日は花火大会があるの。もし良ければ一緒に行かない?」
果たされることのない約束だけが、宙に浮いたまま……

だが、少女は再び姿を現した。
夏が見せる一瞬の蜃気楼なのか。あるいは……。
今、最も暑い季節の燃え上がる非日常が始まる。

ダブルクロス The 3rd Edition『Burning promise(バーニング・プロミス)』
ダブルクロス--それは裏切りを意味する言葉。


■シナリオデータ
プレイヤー人数:3人
プレイ時間:4~5時間

■ステージ
東京近郊N市を舞台とする。


■シナリオハンドアウト
各PCには以下の設定が付くので、キャラクター作成時によくプレイヤーと相談すること。
PC①:N市の高校に通う高校生。UGNエージェントもしくはUGNイリーガルである。また、六郷美月の友人だった。
PC②:N市の高校に通う高校生。まだオーヴァードではない。†覚醒表†は“死”、“憤怒”、“感染”、“渇望”から選ぶこと。
PC③:UGN N市支部支部

PC①用ハンドアウト
ロイス:六郷美月(ろくごう・みつき)
推奨感情 P:任意/N:悔悟
カヴァー/ワークス:高校生/指定なし

キミにはかつて六郷美月という女の子の友達がいた。
彼女はキミの目の前で炎に巻かれ--姿を消した。
ところが、N市で起こる怪事件を追ううちに、キミは美月と再会する。
今になってなぜ、姿を現したのだろうか。


PC②用ハンドアウト
ロイス:火野悟(ひの・さとる)
推奨感情 P:執着/N:恐怖
カヴァー/ワークス:指定なし/指定なし

夏の夕暮れ、キミは帰途についている。
そんなキミの前に火野悟と名乗る男が現れた。
気づくと彼の腕がキミの心臓を貫いていた。
力が、血が、命が抜けていく。キミは死んだ。


PC③用ハンドアウト
ロイス:ハボリム
推奨感情 P:執着/N:脅威
カヴァー/ワークス:/UGN支部

N市では現在、謎の人体発火事件が発生している。
事件の裏に見え隠れするFHエージェント“ハボリム”。
彼を追っているうちに、キミは遂に遭遇する。
ハボリムが一人の人物を殺害した現場に。

■PC間ロイス
PC①→PC②→PC③→PC①の順番に結ぶこと。

 

†オープニングフェイズ†

●シーン1:PC②
◆解説
PC②が帰途についている。季節は夏。花火大会が近いため、街には活気が満ちている。
時刻は夕暮れ。
このシーンでは、PC①はまだオーヴァードとして覚醒しておらず自覚もしていない。
PC②は登場していても侵蝕率を上昇させる必要はない。
火野 悟に殺害されるが美月の《抱擁》により蘇生。
その際、オーヴァードに覚醒する。

▼描写1
夏の夕暮れ、キミは家路についている。セミの声がキミの耳朶を打つ。
街のあちこちに花火大会のポスターが張り出されており、街には活気が満ちている。
キミの進行方向に一人の大柄な男と、女性だろうか小柄な人物が立っている。
通り過ぎようとするキミの背筋が真夏にも関わらず凍るように冷えた。
セミの声が一段と小さくなったように感じる中、男はおもむろに声をかけてきた。

▼セリフ:火野 悟
「お兄さん(女性なら、お姉さん)、カッコいい(かわいい)バック持ってるね」
「今、急いでる? 理由当てていい? ん~~もしかして夜逃げ?」(足さえ止めてくれれば声かけは何でも良い)
「俺、火野悟っていうの。お仕事は悪の秘密結社」
「じゃ、ちょっと悪いんだけど、死んで♡」

▼描写2
火野悟と名乗った男の右手が突如燃え上がる。
そして、次の瞬間、火野悟の右腕は滑らかにキミの左胸を貫いていた。
キミの耳元で火野は囁く。
「運がよかったら、目覚めたときは超人に生まれ変わっているよ」
右腕を抜かれるとキミの胸から鮮血が迸る。火野悟は軽くキミの肩を押した。
立つことすらできずキミは地面に仰向けに倒れこんだ。
命が、血が、力が抜けていく。
痛みは感じない。ただ、酷く寒いと感じる。
やがてその寒さも感じ取れなくなり、キミの人生はあっけなく終わりを迎えた。

◆結末
PC②が死亡したところで終了。

●シーン2:PC①
◆解説1
PC②の回想からシーンは始まる。
時は、小学校低学年ごろ。季節は夏。
PC①とよく遊んでいた女の子がいた。名前は六郷美月。
場所は封鎖された廃工場。


▼描写1
キミにはかつて“みーちゃん”と呼んで親しくしていた女の子がいた。
彼女は内気でオドオドとした性格の少女だったが、キミの前では年相応の明るさを見せていた。
キミが小学校のころ、、キミと“みーちゃん”は捨てられた工場を秘密基地と見立て遊んでいた。
学校から持ってきたのだろうか、彼女は白色のチョークで床に不可思議な文様を描いている。

▼セリフ:みーちゃん
「これは火の悪魔、“ハボリム”を召喚する魔法陣」
「“ハボリム”は私の嫌なものを全部、燃やしてくれるの」
「学校も、テストも、運動会も。……偽物のお父さんも、お母さんも」
「本当の私は魔法使いで、本当のお母さんは優しくて、お父さんはカッコよくて……私をぶたないの」
「娘の私を殴っては、『ごめん、ごめん……お前を愛しているから殴るんだ』って泣いて謝るの」
「今は封印されて力が使えないけれど、いつの日か魔法使いとしての力を取り戻したとき、PC①ちゃんだけは友達だから特別に助けてあげるわ」
「話は変わるけど、PC①ちゃん、明日は花火大会があるの。もし良ければ一緒に行かない?」
「うん、約束ね」(PC①が了承する)


◆解説2
場面は変わり、“みーちゃん”の家が燃え盛る炎に包まれている。
美月は父親の虐待(煙草による根性焼き)を受けた際に、オーヴァードとして覚醒。
即座にジャーム化し、生まれ育った家に火を放った。
PC②は火の手に包まれる“みーちゃん”の家を目撃している。

▼描写2
“みーちゃん”が廃工場に魔法陣を描いたその日の夜、キミの目の前で彼女の家が燃えている。
暗い夜空を赤々と火の粉が染め上げる。
“みーちゃん”は無事なのだろうか。今、目の前で起こっている事態を脳が理解を拒む。
キミが見つめる先、燃え盛る家の中で“みーちゃん”と視線が合った。奇跡的な角度とタイミングだ。
彼女はキミに微笑みかけると……次の瞬間、勢いを増した炎に呑まれ、姿を消した。
しばらくすると、消防隊が駆け付け消火活動が開始された。
翌日、焼け跡から男性と女性の遺体が見つかった。しかし、子供の死体は見つからなかった。


キミは知らず昔の思い出にふけっていたようだ。花火大会が間近に迫っていることも関係があるのかもしれない。
今、キミの目の前には雑草が伸びた更地がある。かつての彼女の家があった個所だ。
この跡地を通りかかるとたまに思い出してしまう。“みーちゃん”と呼んで親しくしていた女の子とその最期を。

ふと、誰かがキミの顔を覗き込む。
「もしかしてPC①ちゃん?」
「覚えてないかもしれません、小学校の時、仲良かった、六郷 美月(ろくごう みつき)です」
その少女はキミの知る“みーちゃん”の面影を確かに残していた。

◆結末
PC①が美月と遭遇したら終了。

●シーン3:PC③
◆解説
火野悟との因縁を描写すること。その後、現在に戻り火野がPC②を襲った場面に遭遇する。
PC③にPC②の保護をしてもらうことでミドルフェイズでの進行をスムーズにする。
PC②は頃合いを見てシーンインすること。オーヴァードとして覚醒するため、侵蝕率を1D10上昇させること。
(シーン1で侵蝕率上昇を行わないため、変則的ではあるが、このシーンで上昇させる)

▼描写1
昼間でもなおうす暗い繁華街の路地裏。キミは現在、謎の人体発火事件の犯人を追っている。
挙動不審の一人の中年男性が壁を背に荒い息を吐いている。
彼の額からは止めどなく汗が流れ、その目は血走り、とても尋常の様子には見えない。
キミの姿を認めると、不確かな足取りで近づいてくる。

▼セリフ:中年男性
「か、体が熱い……燃える!」

彼の心臓付近から突然、炎が噴き出す。
血液が全身を巡るように火炎は彼の体の内側から爆発的に燃え広がる。
(全裸中年男性with火炎 はエキストラなので宣言だけで倒すことが可能)



▼描写2
キミは夜のパトロールに出ている。
突如、時間が止まるかのような感覚がキミを襲う。ワーディングだ。場所はここから近い。
(PC③が現場に向かった)
倒れこみ絶命したPC②の傍らに立ち、女性は刃物で自身の左手首を切り裂く。
女の手首から流れ落ちる血液はPC②の、穴の開いた心臓にたどり着く。
冬の夜闇の中にあって、なお白かったPC②の顔に徐々に生気が戻り始める。
女性を守るように大柄な男--火野悟はキミの前に立ちふさがる。

▼セリフ:火野悟
「どーもどーも。俺の名は“ハボリム”。しがないFHエージェントさ」
「あんた、この地域の支部長のPC③さんでしょ」
「そんなに急いでどちらまで?」
(適当に会話したら)
「今回は“当たり”なんでお持ち帰りしたいんだけど、俺とPC③さんのよしみで見逃してくれません?」
「あらら残念」(拒否される)
「超人同士の殺し合い、燃えるぜ……と言いたいところだが、人間一人抱えて撤退するのも、かったるい」(PC②に一瞬視線を落とす)
「まぁ、今日はこれくらいにしておきますよ」
「チャオ!」(美月とともに瞬間退場する)

▼描写3
(PC②登場)
キミの心臓は確かに停止していた。
しかし、謎の女性の血は破壊されたキミの心臓を修復し、止まっていた鼓動は再び刻みだした。
彼女の血とキミの血が混ざり合い、心臓の鼓動に合わせ全身にめぐる。
レネゲイド--人類に、そして自然の摂理に反逆するモノ。
今、この瞬間をもってキミは、そう名付けられたウィルスに発症したのだ。
キミのDNAを書き換え、細胞を変化させ--オーヴァード(人を超えたもの)にキミは覚醒を果たした。

◆結末
PC③がPC②と会話を行い、保護したら終了。

 

†ミドルフェイズ†

■固定イベント
固定イベントは、順番に演出していくこと。

●シーン4:PC②
◆解説
PC②が目覚めるシーン。顔合わせのシーンのためPC①とPC③も登場すること。
舞台は、UGN傘下の病院である。
PC②が目覚めると霧谷雄吾とPC②、PC③がいる。
霧谷雄吾は、次のことをPC②に説明する。
すべてをロールプレイで話す必要ななく、該当するページの記述をプレイヤーに提示してもよい。
また、PC②とPC③のプレイヤーが『DX3』を理解しているなら霧谷の代わりに説明させてもよい。
・レネゲイドウィルスについて(ルルブⅠ P271)
・PC②が覚醒してオーヴァードになったこと(ルルブⅠ P276)
・UGNとFHについて(ルルブⅠ P274)
霧谷はそのうえでPC②にUGNに協力してくれるよう要請する。
PC②がこれに応じても拒否してもこの時点ではどちらでもシナリオは進行する。
また、困ったらPC②やPC③を頼るように話す。
このシーンはルルブⅠ P346を参考にしている。

▼描写
キミは目が覚めた。
清潔感のある白い室内--ここは病院で自分はベッドに寝かされている。
そう認識するまでに時間はかからなかった。
状況を理解できないキミのもとに3人の人物が入室してきた。
スーツ姿の穏やかそうな男性--霧谷雄吾がキミに話しかけてきた。

▼セリフ:霧谷雄吾
「気が付きましたか、PC②さん。私は霧谷雄吾といいます」
「これから少し、難しい話をします。混乱することもあるでしょうが、落ち着いて聞いてください」
「心臓をつぶされたあなたが蘇生できたのは、あなたが発症者--オーヴァードである証です」
「20年前に拡散したレネゲイドウィルスによって、そのような能力を得たのです」
(UGNについて)「我々UGNは、オーヴァードの人権を保護し、一般社会での生活を支援する組織です。
あなたがオーヴァードである秘密を守り、オーヴァードの力を乱用する集団と戦うための組織だと考えてください」
(FHについて)「今回の事件は、オーヴァードの力を悪用するファルスハーツというテロ集団が引き起こしたもの。
彼らはその力で人類社会を混乱に陥れようとしています」
「あなたは、もうこちら側の世界に関わってしまった。現在、この街では、FHが人々を襲い、突然人が燃え上がる不可解な事件が発生しています。我々に協力してくれませんか?」
「ありがとうございます。詳しい話はいづれまた」(了承する)
「そうですか。今はそれで構いません」(断る)
「また、何かわからないことがあれば、ここにいるPC②さんとPC③さんに聞いてください」
「PC①さんとPC②さんは同じ高校に通っていると聞いています。ぜひ仲良くしてください」(PC①とPC②に見る)
「PC③さん、支部長としてPC②さんをよろしくお願いします」
「それでは、私は失礼します」(退場する)

◆結末
PCたちが適当にロールプレイを行ったらシーン終了。PC②は何ごともなかったかのように退院する。



情報収集
シーン が終了すると、今回の事件について情報収集を行うことができるようになる。
各情報項目を調べることで、対応するトリガーイベントが発生する。必要があれば、情報取集を行うシーンやPC間で情報を交換するなどのシーンを演出すること。
最初に調査できる項目は次の三つである。
「六郷美月について」
「ハボリムについて」
「人体発火事件について」
なお、次の情報項目については、情報収集を進めることで、調査可能。
「アイムについて」

六郷美月について
<情報:UGN、噂話>8
かつてPC①と親しくしていた女の子。
彼女が小学生のころ、住んでいた家が炎上。
その際、父親と母親の遺体は発見されたが彼女の遺体は遂に見つからなかった。
しかしながら、燃え盛る家の中、彼女を見かけたという情報もあるが真偽不明。
当時、参考人として周囲を捜索されたが行方不明。現在、死亡扱いとされている。


“ハボリム”火野悟について
<情報:裏社会、UGN、FH>8
自称、火野悟。
殺人、放火、強盗など数多くの犯罪に手を染めていると目されるFHエージェント。
オーヴァード同士の戦闘に喜びを感じ、これまでUGNイリーガル含め最低でも11人は殺害している。
パートナーとして“アイム”と呼ばれるオーヴァードとともに、現在発生している人体発火事件に関わっていると目される。
六郷家が炎上した際にも活動が確認されている。
→「アイムについて」の情報収集が可能となる。

人体発火事件について
<情報:噂話、UGN>8
人が前触れもなく、突然炎上する事件。
発火する人物は、例外なくジャームとなっている。
解剖の結果、生前、心臓が破壊されその後、ブラム=ストーカーのエフェクト(<抱擁>)によって蘇生されている。
その際、何らかのトリガーでレネゲイドウィルスを発症するよう仕組まれているようだ。
現在、UGNでの隠ぺいにより噂話程度にしか広まっていない。
しかし、発生が多くなった場合、UGNの隠蔽力では揉み消せない可能性もある。


“アイム”について
<情報:裏社会、FH>8
その正体は、PC①のかつての友人、六郷美月。
直接戦闘向きのオーヴァードではなく、主に支援を得意とするFHエージェント。
六郷家炎上の際に火野悟の活動が確認されており、火野に拉致されたため被害を免れたと思われる。
以降、火野の任務の際、ともに行動する様子がたびたび目撃されている。

■トリガーイベント

●シーン5:PC②
条件:「アイムについて」を調べた
◆解説
PC②の日常を描写すること。PC②はどのような人物で日常を送っているのか。PLと相談して決めること。
その後、アイムが現れる。彼女の目的はPC②の勧誘。
彼女の説得の最中、ハボリムが現れ、PC②をFHに所属するよう脅迫する。
明日の花火大会までに答えを出すよう伝えるとアイムとともに退場する。

▼描写
キミは世界の裏側に隠されていた真実を知ってしまった。
しかし、変わらないものもある。キミの日常だ。
(PC②の日常を描写すること)
ふと気づくとキミの目の前に小柄な女性が立っている。


▼セリフ:アイム
「すみません、初めまして。私はFHエージェントのアイム。本当にごめんなさい。先日は私の仲間、火野が失礼しました」
「貴方がこうして生き返っていることに安心しました。今日は、貴方をFHに勧誘に来ました」
「貴方は、人を超えた超人として2度目の生を受けました。FHなら、目覚めた超人の力を活かせる」
「叶えたい夢はありますか? その“欲望(ねがい)”、FHは手伝いができます」
「FHには多数の超人(オーヴァード)が在籍しています。そのネットワークを使えば、きっと貴方の望むことができると思います」
「火野は強大なオーヴァードです。逆らう者には容赦しません。暴力で人を支配することに無上の幸せを感じる男です」
「……それに、FHに所属しないとなれば彼は貴方を痛めつけ、それでも断るのなら……殺されてしまうでしょう」
「これは私の本心から貴方を思って言ってます。どうか私と来てください」


(アイムとPC②との問答の後、ハボリムが登場する)

▼セリフ:ハボリム
「よお、おにいさん(女性なら、おねぇさん)。どーも、火野悟、改めハボリムです」
「こんな美男子を捕まえて暴力男だとか、ヒドイと思わない?こいつはいつも物事をオーバーに捉える。困ったもんですよ」(軽くおどけて見せる)
「勧誘の仕方が寒いんだよ、代われ」(アイムに言い捨てる)
「悪いことは言わない、UGNはやめといたほうが良い」
「奴らはオーヴァードの存在を世間に隠ぺいしている」
「オーヴァードと人の共存のため、今はまだ世界に知らせるべきではない。……それがUGNの見解だ」
「秘密裏に活動して世間の人間は誰も知らず、褒められもしない。事件のもみ消しに走り回って、やがて使い潰されてジャームになって、元お仲間に駆除される……」
「人を超えた俺たちが、なぜ人間社会に縛られなきゃならない?」
「俺たちは神に選ばれた上位存在だ。退屈な寒い日々は捨てて、燃える生き方をしようぜ」
「オーヴァード同士の殺し合いで相手に止めを刺して一息ついたとき、“俺、すっげー生きてる”って実感が湧いてくるだよ」
「あんたが何に魂からの喜びを見出すのか、一緒に探してみるってのも一興だろ?」
「まぁ、急に言っても踏み出せないよな。なんなら俺が、あんたの心残りを全部燃やしてやってもいいが……」
「話は変わるが、日本の神話にはカグツチという火の神が出てきてな。そいつは生まれるとき、自分の炎で母親を焼き殺している」
「誕生と親殺しは表裏一体だ。クモの中には自分が生んだ仔グモの成長のために自分を食わせる奴もいる」
「親だったら、あんたの新たな誕生と巣立ちを喜んでくれるさ。……親ってのは本来そうであるべきだ」
「話が長くなったな。明日、回答を聞きに来るよ。それじゃ!」
「おい、行くぞ」(アイムに向かって)
アイムは肩をびくりと震わせると消え入るような小声で「……はい」と答えた。

結末
ハボリムはキミに背を向け立ち去る。
アイムはキミとハボリムの遠ざかる背中を交互に見たが、軽く会釈して彼女も去っていった。


●シーン6:PC①
条件:「アイムについて」と「人体発火事件について」を調べた
◆解説
美月とPC①との交流を描写するシーン。
その後、美月はPC①と2人きりで話したいと切り出す。
美月はPC①に対して、六郷家が炎上した際に何が起こったのか説明する。
その後、花火大会に仕組まれたジャーム化計画を告白し、助けを求める。
しかし、突然その場に火野が現れ、PC①を攻撃する。


▼描写
キミと美月は今日一日を共に過ごした。
(PC①との交流を描写)
帰る際になって、美月は真剣な表情でキミに切り出した。


▼セリフ:美月
「私なんかにはもったいないほど今日は楽しかった。PC①ちゃん、話があるの。どこか2人きりで話せる場所に行きましょ」
(移動後)
「明日は、この街を離れて欲しいの。大きな災いがこの街に降りかかる」
「貴方は私の一番の友達だから、貴方だけでも逃げて欲しい」
「ごめんなさい、理由は言えないわ。ただ、私を信じて」
(PC①がUGN、FHなどに言及する)
「知ってたんだ」(驚きに目を見張り、その後、肩の荷が下りたように微笑む)
「ねぇ、私が今まで何をしていたか聞いてくれる?」
「私はFHのエージェント、アイムとして生きてきた」
「子供のころ興味があったオカルトを試してみたことが始まりだった」
「貴方と遊んだ秘密基地、そこに魔法陣を描いて“ハボリム”という悪魔の召還を願ったわ」
「そうしたら、何の因果か--その日の夜、私の前にハボリムと名乗る男が現れた」
「ハボリムが私の親を殺したとき、私は涙が止まらなかった。死んで欲しいとさえ思っていた人たちだけど、あんな死に方ってないよ」
「何とか火を消そうと暴れる様子、皮膚が髪が燃える匂い、焼けた喉から迸る絶叫……。忘れられるわけがない」
「でも、心のどこかで、ようやく自由になれると思った。けど、何も変わらなかった」
「ハボリムは、事あるごとに私を殴りつけ、そのあと、『愛している』と優しくするの」
「何も変わらない。私はハボリムに使われているだけ。もう疲れちゃったよ」
「この街で起こっている人体発火事件、これは明日の花火大会の布石」
「私の血によって蘇った人たちは、例外なくレネゲイドウィルスに感染しているわ」
「一部の“当たり”と呼んでいる特殊な人は、蘇生時にオーヴァードに覚醒するけれど、大抵の人は、何事もなかったかのように日常を過ごすの。でも彼らは何らかの重大なショックなどでレネゲイドウィルスが発症する」
「その人たちを一斉に目覚めさせるさせるためにハボリムは、花火に細工をしたわ」
「花火が打ちあがり夜空に咲くと、中に仕込まれたウィルスが散布され、多くの人たちが“起爆”する」
「PC①、細工された花火の保管場所は--」

突然、美月の顔が恐怖にひきつる。
キミの肩越しに“何か”を見つめている。

(PC②が振り向くと宣言)

振り向いたキミの顔のわずか20cm先に燃える拳が迫っている。
(難易度9の<回避>判定を行うこと。失敗した場合、ハボリムの攻撃が命中し、4DのHPダメージを受ける)

▼セリフ:ハボリム
「よぉ、色男(女性ならおねぇさん)、人の女と何してるんだ? 妬けるぜ」
「おい、てめぇはこの忙しい時期に何UGNと遊んでんだ?」(アイムに向かって)
「花火に備えて街の人間どもにネタを仕込んでいたのによ。勝手に起爆する出来損ないが出てきて、いい迷惑だぜ」
「ありきたりな台詞だが、ここまで知ったんだ、生きて帰れると思うなよ?」(PC①に向かって一歩踏み出す)
瞬間、周囲の気温が3度は跳ね上がった。ハボリムの両手が赤熱する。彼の全身から異常なほどのレネゲイドが放出される。

▼セリフ:アイム
「やめて!」(PC①とハボリムの前に立ちはだかる。その体は恐怖に小刻みに震えている。しかしそれ以上の勇気が彼女を支えている)
「その人は、私のたった一人の友達なの! どうかお願い、見逃して!」

▼セリフ:ハボリム
「おいおいおい、なに寒いこと言ってるんだ?」(言葉を交わすうちに赤熱した両腕は更に過熱し、ハボリムを中心に周囲の景色が陽炎に包まる)
「UGNはぶっ殺しておくに限るだろ?」
「そこをどけ、てめぇもぶっ飛ばされてぇのか? あぁ?」

▼セリフ:アイム
「殴られたって絶対どかない!PC①に手を出したら私は自殺するわ」(冷や汗と高温による発汗に耐える)
「私が死ぬと、あんたも困るでしょ」

▼セリフ:ハボリム
「…………さっきのは冗談だよ、冗談。俺がお前の嫌がることを一度でもしたことがあるか?」(アイムに向かって)(両腕が元に戻る。周囲の陽炎も幻のように消える)
「俺たちも暇じゃない、さっさと帰るぞ」

▼セリフ:アイム
「今日は本当にありがとう。私は貴方との思い出があったから、今日まで生きてこれた。そして……今日の思い出があれば、きっと明日も生きていける」
「だから、貴方は街を去って。お願い、約束よ」
「さよなら、大好きだったよ」(陽炎のように輪郭がぼやけ退場する)

▼セリフ:ハボリム
「女に助けられた気分はどうだ? 二度と俺の女に近づくんじゃねぇぞ? はははは」(自身の身体が一瞬にして燃え上がり退場)


◆結末
ハボリムはアイムに対してEロイス<囚人の鳥籠>を使用する。
以降、アイムはハボリムが望むシーン以外に登場できない。
このことは、PCたちに伝えてもよい。
後にはPC①だけが残される。


●シーン7:PC③
条件:PCが花火の保管場所の捜索を開始した
◆解説
異物混入花火を捜索するシーン。花火を見つけるには<情報:ウェブ>か<知覚>のどちらかで難易度10の判定に成功する必要がある。
この判定は、登場しているPCは、全員1回ずつ挑戦することができる。
判定に成功したら、郊外の火薬庫に保管されていることが判明する。
PCたちが火薬庫に向かうとジャームとの戦闘になる。
データは、ジャーム:クラッシャー(ルルブⅡ P264)×2、ジャーム:ブラスター(ルルブⅡ P264)×1。
エネミーは一つのエンゲージに存在し、PCとは5mの距離が離れている。
戦闘終了後、PCは細工された花火をすぐに発見できる。宣言だけで破壊が可能。
その後、PC③の携帯電話に着信がある。
相手はハボリムである。PCたちとの雌雄を決するべく廃工場に来るよう伝える。

▼描写
今回の事件の“起爆剤”は郊外の火薬庫に保管されているようだ。
踏み入ろうとしたキミたちの前に3人の男たちが立ちふさがった。

▼セリフ:ジャーム
「こここ、ここから先は、かかか火気厳禁!」(3人の男たちの体が一斉に燃え上がる)

▼描写2
花火の確保に成功したPC③の携帯電話に着信がある。
相手は非通知のようだ。

▼セリフ:ハボリム
「よぉ、PC③さん。ハボリムだ」
「やってくれたな、UGN。市民のひと夏の思い出を壊して楽しいか?」
「俺が仕込んだ花火が打ち上れば、誰もが忘れられない“燃える”イベントになったのによ。心底、“寒い”展開になったぜ」
「だがな、俺のはらわたは煮えくり返ってるんだよ、決着を付けようぜ」
「そこにいるPC①に伝えろ。てめぇと愛しの“みーちゃん”の思い出の場所、秘密基地で待ってるとな」

◆結末
PCたちが秘密基地(廃工場)に向かったらシーン終了。

 

●シーン8:PC①
◆解説
舞台は、廃棄された工場。
ハボリムは計画を邪魔したPCたちを排除しようと襲い掛かってくる。
このシーンでは衝動判定を行わず戦闘を開始する。
敵は火野昭と六郷美月。
PCたちは一つのエンゲージとし、5m先に火野が、10m先に美月が、それぞれ別のエンゲージとして配置すること。
なお、美月は<蝕む声>により火野の支援を行う。
PC①の説得があってGMが納得するなら、<蝕む声>は解除されてもよい。
その後は、PC①の支援を行ってもよい。

▼描写
寂れた夜の廃工場。
壊れた窓ガラスを通して頼りない月明かりが内部を照らし出す。
在りし日の栄華は既に消え失せ、在るのは瓦礫と廃材とうず高く積もった埃だけ。
まるで時が止まってしまったかのような廃工場で火野と美月はキミたちを出迎えた。

▼セリフ:ハボリム
「よぉ、良い夜だな。UGNのクソども」
「俺の計画を潰して楽しかったか?」
「だが、計画なんてどうだっていい。俺は今、久しぶりに燃えているぜ」
「超人同士の真剣勝負ができるんだからな」
「よぉ、おにいさん(PC②)。一応聞いておくが、FHに来る気はあるか?」
「ふん、寒いんだよ。俺が消し炭にしてやるよ」(断る)
「やっぱり人間正直に生きるのが一番だ。一緒にそいつらを殺そうぜ」(了承する)
「PC③さん、俺はあんたを一目置いてんのさ。燃え尽きるまで戦おうぜ」
「PC①、せっかく拾った命なのに、わざわざ殺されに来るなんてな」
「今度も助けてもらえるなんて思ったら大間違いだ。もうてめぇの声は届かねぇよ」
「俺が骨の髄まで躾けてやったからな」

▼セリフ:アイム
美月--いや、FHエージェント“アイム”はPC①に酷薄な冷笑を浴びせた。
「PC①、私はハボリムについていくわ。彼は私の嫌なもの全てを焼き尽くしてくれるわ」
「私を殴る父も、それを助けない母も。……そして貴方も」
「貴方がずっと疎ましかった! 優しい家族、温かい家、おいしいご飯、仲の良い友達……!」(PC①の設定によってセリフは変えること)
「私の持っていないものを全部持っている貴方が羨ましくて仕方がなかった!」
「貴方なんて嫌い嫌い大嫌い!顔も見たくないわ!」(瞳から涙が零れる)
「あれ、私なんで泣いて……」(突然の涙に戸惑う)

▼セリフ:ハボリム
「おしゃべりはそこまでだ」(アイムとPC①の話に割って入る)
「もう体の火が抑えきれないんだよ」
「ここからは言葉はいらない。拳で語ろうぜ」
「命、燃やすぜ!」
「俺が燃え尽きる……馬鹿な!? 俺はハボリム……この世に火炎地獄をもたらす者…」(倒された)


▼描写2

周囲一帯が火炎地獄の中、ハボリムの体が塵のように消え始める。まるで《赤色の従者》で生み出された“従者”と呼ばれる疑似生物のように。
「俺を殺しやがったな、バカどもめ。てめぇら全員終わりだ」(足元から徐々に塵に変わり、もはや立つことができない)
「とっておきの熱いジョークを教えてやるよ」
悪魔学における“ハボリム”にはいくつかの呼び名がある。ハボリュム、アイン、エイムそして--アイムだ」(腰より下は完全に消え失せた)
「ハボリムとアイムは同じ化け物なのさ」
「アイムハボリム(I'm Hborym)、……『私こそがハボリム』って訳だ」
「最後に見せてやるよ、俺の--私の--罪を!」(《悪意の伝染》を使用)

◆結末
工場の床に火炎で描かれた魔法陣が展開する。
一瞬にして目もくらむような光がキミたちの意識を漂白する。
シーン9に移行すること。

●シーン9(マスターシーン)
条件:シーン8のあと
◆解説2
ハボリムの《悪意の伝染》によってPCたちは登場不可。PCたちは侵蝕率を上昇させる必要はない。
便宜上、登場はできないが映し出される光景はPCたちにも見えている。
美月の過去の覚醒の様子がPCたちに提示される。
美月は自身の手で両親を殺め、その罪悪感から逃れるために火野を作り出した。
これまでのシーンで張られていた以下の伏線を回収するシーンでもある。
・なぜ魔法陣を描いた夜に六郷家は炎上したのか→父親に根性焼きされてオーヴァードに覚醒したから
・燃える家の中、なぜ美月はPC①に微笑んだのか→殺害しようとしたから
・なぜ、PC①の前で炎に巻かれ消えたのか→頭を抱え蹲ったから
・なぜハボリムが炎上の際に確認されたのか→その時に誕生したから
・なぜハボリムがシーン6で引き下がったのか→自分が美月の従者だから
・なぜハボリムが殴った後、美月に優しくするのか→父親の性格を参考に作られたから
・なぜ『火野悟』という作り物じみた名前なのか
→作られた存在だから。余談ではあるが、名前の由来は、『非(火)を悟る』。火野自身が名付けた。彼は皮肉のきいた良い名前だと思っている。


▼描写1
気づくとキミたちは見知らぬ家の中に立っている。
薄汚く狭い部屋の中、一人の男と女児がいる。彼らには触れられないし、声は届かない。火野が見せる過去の光景だからだ。
女児は小学生くらいだろうか、キミたちは六郷美月の面影がある。


▼セリフ:父親
「なぁ、美月、お父さん言ったよな? 秘密基地には行くなって!」(美月を殴る)
「美月が悪い子だからお父さんは叩かなきゃいけない。お前のことを愛しているこそ厳しくしつけるんだ」

▼セリフ:美月
「ごめんなさい、ごめんなさい。私、もう秘密基地に行かない。だから許して」

▼セリフ:父親
「お父さんとの約束を破る悪い子は、お仕置きだ」
咥えたタバコに火をつけ、父親は美月の左腕をぐいと引っ張ると、前腕にタバコを押し付けた。

▼セリフ:美月
「うううぅぅぅ!!」(痛みに悶える)

▼描写2
ドクンと心臓が大きく跳ねた。
昼間のPC①との会話を思い出す。
『「これは火の悪魔、“ハボリム”を召喚する魔法陣」』
血が燃えるように熱い。
『「“ハボリム”は私の嫌なものを全部、燃やしてくれるの」』
心臓が跳ねるたび、全身に力が満ちる。
『「学校も、テストも、運動会も。……偽物のお父さんも、お母さんも」』
この力を試してみたい。全能感が美月の身体を支配する。
『「本当の私は魔法使いで、本当のお母さんは優しくて、お父さんはカッコよくて……私をぶたないの」』
右手を父に向ける。彼が火炎に焼かれる光景をイメージし、力を集中させる。
瞬間、彼の全身から炎が噴き出す。
父親は娘の前で暴れまわり、必死に火を消そうと藻掻く。獣のような声が彼の喉から迸る。
父は言った。『愛しているからこそ殴るのだ』と。
であれば私も彼に精いっぱいの愛を返そう。

「情けない声だね、お父さん。骨の髄まで愛(燃や)してあげるよ!」


「お父さん、どうしたの!?」突然の異変に母親も部屋に入ってくる。

やはり私はこの人たちの本当の子供ではなかったのだろう。
本当の私は魔法使いで、彼らは偽物だったのだ。
だからこそ、男は私を殴り、女は見て見ぬふりをしたのだ。
沸々と怒りが込み上げてきた。
身体のマグマが行き先を求めている。
女に手を向け、意識を集中する。父親だったモノを焼いた時よりもスムーズに力を操作できた。
女も男と同様に火達磨になった。


……男と女のもがき苦しむダンスを見ているうちに、火の手は家全体を包み込んでいた。
「いつも私を叱っていたお父さんが、こんな呆気なく死んじゃうなんて!」
「おかしくって涙が出ちゃう! はははは!」
今なら、なんだって壊せる。私は、私の嫌なもの全部を燃やせる。
私は、“ハボリム”の召還に成功していたのだ。私こそがハボリムだったのだ。
世界を焼き尽くすため、部屋を出る。何の気なしに外を見たとき。
燃える景色の向こうにPC①と目が合った。
PC①を見た瞬間、狂おしい程の愛おしさを感じる。
待ってて、私の燃える愛で包み込んであげる。そう心の中で呟き、微笑みかける。
瞬間、自分の考えに戦慄し、正気に戻る。
私は親友さえも手にかけようとしたのか。
しかも、既に自分の手で両親を焼き殺してしまった。
様々な家族との記憶がフラッシュバックする。
苦しかったこと、痛かったこと、楽しかったこと……。そして、優しかったころの父と母の記憶……。
私は頭を抱え蹲る。
「違う、私じゃない。私はやってない!」
「そうだ、きっと召喚された悪魔が、お父さんとお母さんを殺したんだわ!」
私はイメージする。私の家族を、家を燃やし尽くした凶悪な悪魔を。
魔法陣から現れた“そいつ”は、絶大な力を持ち、気に食わないものを燃やし、絶対的強者として振る舞う。
すなわち、“父”のように。

「よぉ、嬢ちゃん。てめぇの父と母はよく燃えたぜ」

床に影が差し、私は顔を上げた。床に這いつくばる私を男が見下ろしていた。
そうして、私の全ての罪と記憶を背負った、彼--火野悟は誕生した。

◆結末
過去の幻影は幻影は消え去った。
クライマックスに移行すること。

 

†クライマックスフェイズ†

●シーン10(PC①)
◆解説
舞台は引き続き、燃える廃工場。
火野が完全に消滅したことで《悪意の伝染》は解除された。
自分が犯した罪を思い出した美月は、かつて封じ込めた“真の”ハボリムとして覚醒する。
これはEロイス<ファイトクラブ>で表現する。美月とハボリムは別の人格として扱う。
PCたちと適当な会話をした後、衝動判定を行い、戦闘へ移行すること。
もし、PC①が美月を助けたいと申し出た場合、真のハボリムは自身の所持している<ファイトクラブ>に、<砕け散る絆>を使用することで消去してもよい。
その際、何らかの条件(FSシステムを用いる、2ラウンド以内に倒すなど)を追加してよい。
結果、美月は通常のオーヴァードに戻るとしてもよい。
ただし、ハボリムが自身を消しても良いと思えるような説得をすることが必要である。
(PC①が花火大会を一緒に見に行く約束を思い出させる、Sロイスに指定するなど)
そんな“熱い”ロールプレイがPC側からされた場合は、やはりGMとして要望に応えるべきだろう。
PCからの提案がなければ通常通り処理を行うこと。


▼描写
いつの間にか、キミたちの意識は現実世界に戻っていた。
見ると、火野は完全に消滅し、塵と化していた。
彼が消えたことで一連の白昼夢じみた光景も終わった。
依然、工場内は燃え上がっている。


▼セリフ:美月
「はははは! 傑作だよね」
「私が両親を殺して、その罪から逃れたいから火野が生まれたなんて」
「ハボリムが来たから父たちは殺されたんじゃない。私が殺したからハボリムが生まれた」
「貴方たちには感謝してもしきれない。美月が封印した“本当の”ハボリムを目覚めさせてくれたんだから」
「PC①、今だから言えるわ。私は貴方を愛している。狂おしい程に愛おしい。」
「昔、言ったこと覚えているかしら?私は、魔法使いとしての封印された力を取り戻したの。貴方だけは友達だから特別に助けてあげるわ」
「私と一緒にFHに来て。二人で愛し合いましょう?」
「嬉しいわ。まずは邪魔なお仲間を燃やしてから……ね?」(了承する)
「あら、残念。愛しているからこそ、壊してあげる。私の愛で朽ちる貴方を私だけが知っていたいから」
「さぁ、命を燃やしましょう!」
「FHエージェント、“ハボリム”! 推して参るわ!」
「あぁ……誰か、私を愛して……」(倒された)

◆結末
戦闘が終了すると、間もなく消防隊が駆け付ける。
やがて廃工場は鎮火される。
エンディングへ。

 

◆“アイム”六郷美月

シンドローム:サラマンダー/ソラリス/ブラム=ストーカー

<肉体>2 <回避>1
<感覚>2 
<精神>10 <RC>4、<意志>1
<社会>4 <情報:FH>3

HP:94

行動値:14

侵蝕率:150%(+4個)


エフェクト

<蒼き悪魔>3、<炎陣>2、<氷の回廊>3、<氷の城塞>3、<灼熱の結界>5、<焦熱の弾丸>2、<憎悪の炎>2、<白熱>2、<火の檻>2、<炎の刃>2、<クロスバースト>3、<終末の炎>3、<極大消滅波>5、<燃える魂>3、<フレイムディザスター>3、<炎神の怒り>3、
<氷の城塞>3、<氷盾>3、<氷雪の守護>3、<融解>2、<冷静と情熱の間>2、<ブレイズセル>3

<アドレナリン>3、<エクスプロージョン>3、<癒しの水>5、<攻撃誘導>3、<タブレット>3、<ポイズンフォッグ>3、<盲目の羊>5、<狂戦士>3、<さらなる力>2、<力の霊水>3、<堕ちる絶望>3、<蝕む声>2、
<トランキリティ>5、<アクアウィターエ>3、<アウトブレイク>1、<ベルセルク>2

<赤色の従者>5、<渇きの主>5、<赤河の従僕>3、<鮮血の一撃>2、<血の宴>3、<血の絆>2、<抱擁>2、<蝕む赤>3、<ヘルズブラッド>3、<夜魔の領域>3、<従者の目覚め>2、<主人への忠誠>2、<紅の刃>2、<不死不滅>3

<コンセントレイト:サラマンダー>3、<コンセントレイト:ソラリス>3、<瞬間退場>3、<瞬間退場Ⅱ>2、<生命増強>2、<ヴァイタルアップ>2


コンボデータ:
▼火属性付与(エンチャント・ファイア)
<さらなる力>+<狂戦士>+<コンセントレイト:ソラリス>(+<タブレット>)
「対象:単体」「射程:視界」。判定は<RC>、ダイス11個、クリティカル値7。難易度20。
対象が次に行うメジャーアクションの判定のクリティカル値を-1(下限6)し、さらに、その判定のダイスを+6個する。
行動済みの対象に使用することで対象は未行動になる。
シナリオ3回まで<タブレット>を組み合わせて「射程:視界」に変更する
解説:
ミドルフェイズでの戦闘で使用。火野悟を援護する。火野の足元に魔法陣が浮かび上がり、炎の勢いが強まる。


▼燃えよ我が初恋
<紅の刃>+<焦熱の弾丸>+<堕ちる絶望>+<クロスバースト>+<トランキリティ>+<コンセントレイト:サラマンダー>


「対象:単体」「射程:視界」に射撃攻撃。判定は<RC>、ダイス18個、クリティカル値7、攻撃力+18。
対象の<意志>と対決する。勝利すると、衝動判定が発生する。この際、難易度は9となる。
攻撃後、自身の5点のHPを消費する。
シナリオ3回まで<ポイズンフォッグ>と組み合わせて「対象:範囲(選択)」、「射程:至近」に変更する。
また、<タブレット>の使用回数が残っている場合、組み合わせて「射程:視界」に変更する。

解説:
クライマックスフェイズの戦闘で使用。美月が手をかざした先に無数の魔法陣が生じ、一斉に極太の火柱を噴き上げる。

◆“ハボリム”火野悟
<肉体>6 
<感覚>6 
<精神>6 
<社会>6 

HP:35

行動値:18

侵蝕率:150%(+4個)

コンボデータ:
▼燃える拳
<炎の刃>+<クロスバースト>+<アドレナリン>+<渇きの主>+<炎神の怒り>+<鮮血の一撃>

「対象:単体」「射程:至近」に白兵攻撃。判定は<白兵>、ダイス16個、クリティカル値7、攻撃力+24(<白熱>込み)。
対象の装甲値を無視してダメージを算出する。命中した場合、HPを20点回復する。5点のHPを消費する。
シナリオ3回まで<血の宴>を組み合わせて「対象:範囲(選択)」に変更する。

解説:
ミドルフェイズの戦闘で使用。火野が燃え上がる拳で殴りつける。



運用方法:
●ミドルフェイズ

◆六郷美月
基本的には移動しない。
▼火属性付与を火野に対して行う。
セットアッププロセスで<氷の城塞>を使用し、あらゆるHPダメージを-9する。
ミドルフェイズでのHPをクライマックスフェイズに持ち越すため、攻撃を受けた場合、全力で防御する。

◆火野悟
最初のセットアッププロセスで<ヴァイタルアップ>を使用。HPを50点増加させる。
最初のマイナーで<白熱>+<氷の回廊>を使用。素手を変更し、PCの最も多いエンゲージへ移動する。
メジャーでは、▼燃える拳で攻撃を行う。
美月とエフェクトの使用回数制限を共有しているため、<タブレット>、<ポイズンフォッグ>などのシナリオにn回の制限を持つエフェクトは使用しない。(<血の宴>は除く)
ラウンドに1回等の制限のエフェクトは使用する。(<融解>など)



●クライマックスフェイズ

◆六郷美月
ミドルフェイズでのHPを持ち越して戦闘を行う。
PCを▼燃えよ我が初恋で攻撃する。
その際、<ポイズンフォッグ>+<タブレット>や<血の宴>を組み合わせて「範囲(選択)」に変更する。
持っているエフェクトを活用し、適度にPCたちを追い詰めること。
<堕ちる絶望>の侵蝕率上昇が大きいため、PCたちの侵蝕率管理には細心の注意を払うこと。
侵蝕率が上がりすぎるようであれば復活系のエフェクトは使用せず戦闘不能になってもよい。
また、低すぎるようであれば<夜魔の領域>などを使用し、適度に攻撃を行うこと。
理想としては、2ラウンド終盤から3ラウンド初めに倒され、PCたちの残ロイスが4~5個、侵蝕率150%程度が望ましい。

 

■バックトラック
ハボリムはEロイス<悪意の伝染>、<ファイトクラブ>、<砕け散る絆>、<囚人の鳥籠>を取得している。
バックトラックでは、侵蝕率を4D10引き下げること。



それぞれPLと相談し、
事件解決後の日常を描写すること。

思い浮かばない場合、以下のエンディングを描写すること。

●PC①
美月を倒した→美月の墓参り、一人で花火を見に行くなど
美月を助けた→美月と花火を見に行く

●PC②
・日常を守るため、次の任務へ。
・日常に戻り平和な日々を過ごす。
など

●PC③
霧谷雄吾に今回の事件を報告し、労われる。

■アフタープレイ
エンディングが終了したらアフタープレイを行うこと。
レコードシートの項目をチェックして経験点を算出する。
本シナリオの「シナリオの目的を達成した」は、ハボリムの大規模ジャーム化事件を未然に防いでいれば5点となる。
六郷美月が助かっている場合、さらに2点追加する。
さらに、ハボリムのEロイスは合計4個なので、+4点すること。